ベタインでベンチスローのパワーが14日で約16%向上
Excerpt: ビート由来のベタイン(TMG)を2週間摂取したところ、抵抗トレーニングを行う男性のベンチスロー・パワーが約16%向上したという結果が報告されています。ランダム化・二重盲検・クロスオーバー試験では、等尺性ベンチプレス力も上がり、垂直跳びパワーや等尺性スクワット力の上昇はごく小幅にとどまりました。反復回数やジャンプスクワットのパワーは変化せず、対象は12名の男性のみでした。この記事ではデータの要点、使用した用量、そしてリフターが取るべき結論と注意点を解説します。
14日間の安価なビート由来化合物の摂取が、ハードテストブロック初日にベンチスロー・パワーを約16%向上させたという見出しは、2010年に行われた規模の小さいベタインのクロスオーバー試験から得られたものです。興味深い結果ではありますが、いくつかの留意点があります。特に上半身のトレーニングを行っていた被験者に効果が顕著でした。
ベタイン(TMG)とは?
ベタインは、トリメチルグリシン(TMG)とも呼ばれ、ビート、ほうれん草、小麦などに自然に含まれる化合物です。サプリメントとして単体で販売されており、スポーツ栄養の分野ではエルゴジェニック(運動能力向上)効果が期待されてきました。そこで Lee 氏らは、ベタインが筋力・パワーに及ぼす直接的な影響を検証するべく、2010 年に Journal of the International Society of Sports Nutrition に「Ergogenic effects of betaine supplementation on strength and power performance」 と題した研究を掲載しました。
クロスオーバーデザイン
本研究は、抵抗トレーニング歴を最低 3 カ月有する 12 名の若年男性(平均年齢 21 ± 3 歳、体重 79.1 ± 10.7 kg)を対象に実施されました。デザインは バランスランダム化・二重盲検・クロスオーバー 方式です。各被験者はベタイン摂取期間(14 日)とプラセボ期間(14 日)を 14 日の洗浄期間で区切って 2 回ずつ体験しました。
各 14 日ブロックの前後で、被験者は 2 日間(D1・D2)にわたり標準化された高強度の筋力・パワー検査(ベンチプレス、スクワット、ジャンプテスト)を実施。クロスオーバー設計により、個人差によるノイズが抑えられ、さらに連続日測定により蓄積疲労下でのパフォーマンス維持度も評価できました。
パワーとフォースの結果
ベンチスロー(ベンチプレススロー)パワーが最も顕著な変化を示しました。ベタイン摂取後の D1 の平均パワーは 1779 ± 90 W、D2 は 1788 ± 34 W でした。摂取前はそれぞれ 1534 ± 30 W、1498 ± 29 W、プラセボ条件は 1374 ± 128 W、1523 ± 39 W です。単純計算で D1 はベタイン前と比べ約 16% の増加、D2 は約 19% の増加となります(p < 0.05)。
等尺性ベンチプレスフォースも同様のパターンを示しました。ベタイン後は D1 が 2922 ± 297 N、D2 が 2503 ± 28 N。一方、ベタイン前は 2345 N と 2423 N、プラセボは 2175 N と 2128 N でした。D1 の増加幅が大きく、D2 はやや減少していますが、いずれも統計的に有意でした。
下肢については、垂直跳びパワーと等尺性スクワットフォースがベタイン摂取後に僅かに上昇しましたが、効果は上半身ほど顕著ではありませんでした。著者は「ベタインは選択的に一部のテストでパワー・フォースを増加させ、特に小さい上半身筋群で顕著に現れた」と結論付けています。
改善しなかった項目
- ジャンプスクワットパワーはベタイン・プラセボ間で差が見られませんでした。
- ベンチプレス・スクワットの反復回数も変化がありませんでした。
つまり、ベタインの効果は「最大パワー」や「最大等尺性フォース」には現れるものの、レップ数の増加や持久的パワーには寄与しないことが示唆されています。レップ数の増加を目的とする場合、本研究はベタインの有効性を裏付けていません。
用量とタイミング
全文(PMC2915951)によれば、被験者は 1.25 g を 1 日 2 回(計 2.5 g/日) をスポーツドリンクに溶かして摂取しました。2 週間にわたる毎日摂取がプロトコルの主旨であり、単発のアキュート摂取(トレーニング直前の摂取)を想定したものではありません。
注意点
- サンプル数は 12 名の若年男性 と非常に小規模です。女性、年齢層が高いリフター、エリートアスリート、長期トレーニング期間への外挿は慎重に行う必要があります。
- データのばらつきが不均一で、標準偏差が極端に小さいケースもあるため、数値そのものに過度な期待は禁物です。
- 本試験は テスト環境下での短期的パフォーマンス を測定したものであり、長期的な筋肥大や持続的な筋力向上を直接示すものではありません。
リフターへの実践的な示唆
- パワー重視:ベンチスロー・パワーと等尺性フォースは改善しますが、レップ数やジャンプスクワット・パワーは変わりません。
- 上半身が効きやすい:効果は比較的小さい上半身筋群で顕著でした。ベンチ系トレーニングが主なメニューの場合、ベタインは検討に値します。
- 用量・継続:1.25 g を 1 日 2 回、計 2.5 g/日を 14 日間継続するプロトコルを守ることが重要です。単回のプリワークアウト摂取は本研究の条件とは異なります。
- 現実的な期待:小規模クロスオーバー研究の結果であることを踏まえ、トレーニング、睡眠、栄養といった基礎的要素が依然として成果の鍵です。
参考文献
Lee EC, et al. Ergogenic effects of betaine supplementation on strength and power performance. J Int Soc Sports Nutr. 2010. DOI: 10.1186/1550-2783-7-27. PubMed: 20642826.